Anthropicに続きOpenAIも「専門家の関与」を明確化。法務が社内のAI利用体制を整えるための3つのステップ
「うちの部署でも、AIを使っていいですか」。事業部からそう聞かれたとき、法務は何と答えるでしょうか。
Anthropicに続いて、OpenAIも利用ポリシーを改定しました。2026年10月21日に更新され、発効は11月20日です。法務などの専門的な判断には、専門家の確認が前提になる。両社の方向性は、よく似ています。
この記事では、改定の要点を押さえたうえで、法務として何を整えるべきか、社内にどう伝えるべきかを考えます。
OpenAIの改定の要点
OpenAIは変更ログで、重大な用途に関する要件を「明確にした」と説明しています。法務に関わるのは、次の2点です。
- 適切な有資格者の関与なく、ライセンスを要する個別の助言を他者に提供するAIツールを、構築・提供することの禁止
- 法律、雇用、金融、医療などの領域で、人間による確認を経ずに、意思決定、取引、申請といった重大な影響を及ぼす行為を自動化することの禁止
Anthropicの改定(11月12日適用)と合わせると、共通しているのは次の点です。
- 専門性の高い判断には、資格を備えた専門家の確認が前提になる
- 対象分野に、法務が含まれている
- 以前からある考え方を、明確に書き直したもの
Anthropicの改定の詳細は、前回の記事で整理しています。
法務として、どう受け止めるか
AIの利用を止める話ではありません。問われているのは、専門家の確認がないまま、AIの出力が専門的な判断や手続として進んでしまうことです。
つまり、会社としての利用ルールと確認の体制を、誰が決めるのか、という問いになります。AIを使う側の事業部だけでは、判断しきれません。ここは、法務が動くところだと考えられます。
MOLTONの法務AI活用実態調査(上場企業の法務担当者206名、2026年6月)では、AIツールの導入率は89.8%でした。一方、「ほぼ全員が使いこなせている」と答えたのは、法務部門で32.0%にとどまります。導入は9割近くに達していても、使いこなせているという実感は3割です。使い方を整える段階に入っていると考えられます。
OpenAIは、規則に違反した場合に、アクセス権を失うなどの制裁を受ける可能性があるとも明記しています。業務で使っているAIが、突然使えなくなるリスクでもあります。
法務が整えたい3つのステップ
1. 利用の棚卸し
どの部署が、どのAIを、どの業務で使っているかを把握します。社内で契約しているツールの裏側で、どのモデルが使われているかも、確認の対象です。
2. 線引きと確認体制の決定
法務、人事、契約、金融など、専門的な判断に当たる用途は、社内の担当者が確認するのか、外部の弁護士や専門家に任せるのかを決めます。申請や取引をAIに任せる場面でも、専門家の確認を入れるポイントを決めておきます。
3. 記録と相談ルート
誰が確認したかを、後から説明できるようにします。迷ったときに、法務に相談する窓口も明示します。
社内には、どう伝えるか
全体会議や社内ポータルで伝えるなら、次の3点が軸になります。
1. 使うな、ではなく、専門家の確認なしに専門的な判断として使わない
社内の下書き、調査、要約は、Anthropicのポリシーでは対象外と明示されています。OpenAIは明示していないため、自社の契約とあわせて法務で確認します。
2. 気をつけたい使い方の例
- AIの回答を、取引先や従業員への回答として、そのまま送る
- AIが作った契約書の修正案を、専門家の確認なしに採用する
- AIのエージェントに、申請や発注を任せきりにする
規約上、実際に該当するかは個別の確認が必要です。
3. 迷ったら、法務に相談する
相談窓口と、相談の目安(たとえば、社外に出す書面、契約に関わる判断)を示します。
禁止を伝えるのではなく、安全に使うための道筋を示す。この伝え方のほうが、事業部も動きやすくなります。
専門家の確認が足りないときは
整えるべき体制が見えても、専門家による確認を社内で賄うのは、簡単ではありません。AIが一次レビューと論点整理を行い、判断が必要な箇所を弁護士などの専門家が確認する。この分担にすれば、社内に専門家を抱えなくても、確認の経緯を残せます。
おわりに
両社の改定は、AIを法務に使うこと自体を禁じるものではありません。専門家の確認がないまま、判断や手続が進んでしまうことが問われています。11月12日、20日の発効に向けて、棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。
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調査レポート(無料):法務AI活用実態調査レポート(2026年6月)
出典
- MOLTON「法務AI活用実態調査レポート」(2026年6月、上場企業の法務担当者 n=206)https://www.molton.inc/white-paper/3/
- OpenAI「使用に関するポリシー」(2026年11月20日発効)https://openai.com/ja-JP/policies/usage-policies/
- Anthropic「2026 Usage Policy update」(2026年10月8日)https://www.anthropic.com/news/2026-usage-policy-update
- Anthropic「Usage Policy」(2026年11月12日適用)https://www.anthropic.com/legal/aup